『ノスタルジア』の落書き帳

音楽ゲーム『ノスタルジア』に関して考えていることを、ちまちま書いていきます。一応Twitterもあります→@crt14display

『ノスタルジア』(初代&forte)のストーリー考察記録・2

※こちらは音楽ゲームノスタルジア」(初代&forte)の個人的なストーリー考察の途中から、という内容になっております。ご興味のある方は、同記録の1をご覧になってからこちらを閲覧していただくと、話が繋がって読みやすくなるかと思われます。

※また、ここに記載しているのは、「これが正解だ」と主張するものではなく「この線ならある程度以上筋が通る」という観測に基づくものです。恐縮ですがご留意願います。

 

 

Chapter23まで進んだ上で再度初めから振り返る

 ノアは少女の悲しみが人格化された存在であり、少女が猫との出会いよってノアを置き去りにしてしまいました。そして時が経ち、少女を見失ってさまよう猫が辿り着いた「すべての記憶が還る場所」の世界で、ノアは猫に対して階段(その元は鎖)を用意し、自らの元へ来れるように猫に見せる記憶を選び、導いてきたことは前回触れました。

 この設定を持って、改めて初めからストーリーを振り返ると、様々なことに気付かされます。

1.画面の四隅を隠していた楕円形の影

 主に少女と猫の回想シーンで登場していた演出ですが、結局これはノアがその目でふたりを見ていた、ということが分かります。さらに言えば、猫と少女とノア、この3者は始めから同時に動いていたのです。

2.お洒落な帽子

 Chapter2で少女が描いたお洒落な帽子が、ノアの手によって実際に猫に与えられましたが、これにもノアの強い想いが感じられます。

 「あの少女にはできなかったことを、私はあなたにしてあげられる」というライバル意識が今では見て取れます。もし猫がこの帽子の存在を少女から知らされていたら、これは絶大な効果を発揮したことでしょう。しかし、実際にどうだったかは分かりません。

 しかしこの帽子も、ノアの思惑に沿った階段の上での話。真実に向かう闇の中まではついてくることのできない、仮初めの存在だったようです。最初に帽子が消える場面を見た時は「せっかくの帽子が」と思いましたが、結局はそれで正解だったのですね。

3.ノアの後ろにあった扉

 結局開かれることのないままの扉でしたが、前回述べたようにあれは「未来」へ続いていたのでしょう。ノアと猫、二人だけの新たな未来を扉の向こうに用意していたのではないでしょうか。しかし、結果的には開かれなくて正解だったと思われます。これについては後に触れます。

4.少女とその記憶を闇に葬ろうとした理由

 あえて書くことでもないかと思いますが、猫に少女との出会いの記憶が残っている限り、今は自分を少女本体のように見ていても、最後に猫を躊躇させる存在としてノアは危惧していたのでしょう。私の解釈では、少女は始まりから猫を追い掛けていたと考えていますので、ノアは猫に気付かれないうちに、多少強引にでも早期決着に踏み切ったのではないでしょうか。この強引さの理由は次項に記します。

5.Chapter14と15の雰囲気の落差

 少女との出会いの記憶の崩壊は楽曲を聴く限り凄まじく、さすがに猫も何かを感じたのではないでしょうか。「何か聞こえた気がする」「何かが消えた気がする」そんな違和感を猫に抱かれている可能性を危惧し、ノアは底抜けに明るい世界を引っ張り出してきて、とにかく前を向かせようと必死になっていたのではないでしょうか。

6.Chapter16で描かれた階段の終点と扉

 かつて少女と共有した空想の世界でありながら、ほぼ目の前にある階段の終点と扉が描かれています。ノアが階段を創り、自分の未来への扉を用意したのはこの記憶が基になっているのかも知れません。

 これを通して、ノアは猫に対し「かつて一緒に描いた未来が目の前にあるよ」と今歩んでいる階段の道が唯一の正解であると思わせようとしたのではないかと思います。封じ込めたはずの少女が、闇の姿のままでも構わず追い掛けてきている現在、ノアも相当切羽詰まっていた気がします。

7.ambages(遠回り)

 前回はノアに届くまであと一歩のところで遠回りを強いられることになった、と書きましたが、猫の目的が正しく達成されることとノアの思惑を対比してみると、猫にとっては階段を登る旅そのものが実は壮大な遠回りであったというダブルミーニングがこの曲名にはあることが分かってきます。

8.ノアと少女の対話

 猫が少女という闇に包み込まれている間、ムービーでは無言で対峙する場面しか描かれませんでしたが、ここで少なくとも少女はノアに対して必要なことは伝えたのだと思われます。

 それは「自分を完全に排除してはいけないこと」。極力猫を少女から引き離そうとして動いてきたノアでしたが、そのノア自身は少女の一部が人格化されているに過ぎません。少女から完全に離れてしまえば、おそらく存在を維持できないでしょう。ここで先ほど後回しにした扉が出てきます。その扉がノアと猫だけの未来へ続くのだとしたら、それは少女との完全決別を意味します。そうするとノアはいなくなってしまい、結局猫は独り残されてしまいます。それだけは避けなくてはならない、親友をこれ以上悲しませたくない、その強い想いが少女に闇になってでも歩き続ける力を湧き出させたのでしょう。

 だからと言ってノアが引き下がるわけがありません。誰のせいでこうしていると思っているんだ、とブローチコメントの通り強い音を立てて揺れ動いたことでしょう。しかし少女もノアへの配慮が足りなかったことを自覚しています。だからこそずっと目を伏せたままなのです。

 また、猫が戻ってきて自らの元へ寄ってきても、少女は目を伏せたままでした。それはノアの存在を脇へ追いやり続け、猫にノアを紹介しなかったという失敗の責任を感じていたのではないでしょうか。

番外.結局解けない謎

 ここまで来ても謎が全て解けたとは言えないでしょうが、特に気になって仕方のない謎があります。

「結局、少女は何があって猫の前から姿を消したのか?」

 これについては本当に、少女が不意にいなくなっただけで、何の経緯もヒントも見当たりません。悲しむ猫の姿を見つめているノアの姿からも、何か知っているのか知らないのか全く分かりません。確かに見つけられなくなったという事実だけで成り立ちはするのですが、一体何があったのでしょうか?

 

 さて、ストーリーの別の側面も見えてきたところで、続きに移りたりと思います。ゲーム内では階段を登り続けていますが、猫の旅自体はChapter20の時点で終点となっているでしょう。

 長い遠回りを経て、ついに少女との再会を果たせた猫と、憧れを果たせなくなったノア、彼女と向かい合う少女。果たしてどのような結末を迎えるようでしょうか。

 

Chapter24

♪『Dream of You』 :願いが届く その瞬間

◆『美しき記憶のブローチ』:触れた旋律は 時を紡ぎ 役目を終える

  この章が解禁されたのは前章から半年後のことなのですが、とにかくただただ長い距離を登らされました。途中に課題曲とか小さいイベントが挟まるかと思っていたのですが、「これだけ待ってただ歩くだけ!?」と正直思わされました。

 さて、ムービーはノアの視点で始まります。あれだけ苦しまされて、あれだけ頑張って求め続けた憧れの姿、猫との出会いと結びつきを、またも目の前で少女に取られてしまった、という心境でしょうか。そんな中でも、少女が自責の念から猫を拒むのであれば自分の方に来るのではないか、と微かな期待を抱いていたかも知れません。

 しかしそうはなりませんでした。真実を知ってなお、猫は少女を赦すようにその胸に抱かれたのです。いつの間にか忘れてしまっていた、あの出会いの記憶を守り続け、取り戻させてくれたのは他ならぬ少女であったことも後押ししているでしょう。ふたりは喜び合い、少女もここでようやく笑顔を見せます。まさに「願いが届くその瞬間」です。

 ノアはただ、顔をくしゃりと歪ませ、うつむいています。

 

Chapter25

♪『Vide Nostalgia』:そして猫はこの郷夢の世界と別れを告げる

◆『絆のブローチ』:いつの日か 懐かしくなる物語

 顔を歪ませ涙を滲ませるノアに、少女が気付いて目を開きます。何と声を掛ければ良いかと迷っている様子のところを、抱かれていた猫が降りてノアに擦り寄ります。そこに現れる出会いの日々の記憶たち。しかしそこに居るのは少女ではなくノア。

 猫は真実を知ることで。もう一つのことに気付いていました。ノアが少女の心の一部であるならば、少女と共に過ごした時間は、ノアと共に過ごした時間でもあったのだ、と。その証拠として猫がノアに擦り寄ると、「すべての記憶が還る場所」からノアと猫が仲睦まじく過ごす記憶たちが現れたのでしょう。

 自分の求めていたものが、実は初めから手元にあったことを知らされたノアは、満たされたかのように徐々に姿が薄くなり、満面の笑顔に涙を浮かべて別れを告げるのでした。姿は消えますが、おそらく少女の心の中に統合されたのでしょう。

 そして再会を果たしたふたりもまた、あらゆる記憶と出会えるこの世界に別れを告げて、ゆっくりと姿を消しました。

 

 Chapter24と25は、全てが判明した上での展開ですので、新たに解釈を挟む余地はほぼ無いでしょう。素直に見つめて、素直に涙腺を崩しましょう。

 なお、解禁曲の「Vide Nostalgia」はストーリーの一場面というよりも全体のエンドロールという印象が強い曲です。これも「phantasmagoria」と同じくアーティスト名は非表示となっており、ノスタルジアの世界そのものを私たちに強く伝えようとしているのが伝わってきます。

 果たしてこの世界は、ストーリーは私たちに何を伝えようとしていたのか?

 これは推測というより願望に近い想像ですが、Chapter19で触れた「一番大切なものは忘れ去られた奥底にある」という点ではないかと思っています。私達はそこからいつでも歩きだせるのだ、と励ましてくれているように感じるのです。

  

 …以上でノスタルジアの初代およびforteのストーリーは完結となり、考察も終了となります。ここまで長時間お付き合い下さり、本当にありがとうございました。気付かない所での見落としや矛盾があるかとは思いますが、ストーリーを考察する上でのささやかな参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

  以下は、おまけ扱いの考察などを書き連ねております。ますます個人的な内容となっておりますので、お暇な方のみどうぞ。

 

『Ⅰ』はノスタルジアを奏でている

 まず最初に取り上げたいのは、ストーリーの一番初めに解禁される楽曲「Ⅰ」についてです。現行のOp.2が始まって1年を迎えようとしていますが、その日のプレーの締めくくりには必ずと言って良いほどこの曲を選んでいるぐらいのお気に入りです。

 さて、解禁以降は最後の「Vide Nostalgia」に引用されるまで全く出番が無いため、オープニングとしての印象に留まりがちな気がするこの楽曲ですが、全編を通して猫が、ノアが追い求めていたものはここで表される場面の再来であったと思っています。例えばふたりが元の世界へ戻って新しい日々を始めるとして、まずそこに流れる旋律はこの「Ⅰ」であるような気がするのです。ふたりがいつもどこから始まるのか、いつの日も失い得ない土台として今も生き続ける記憶の力が「Ⅰ」の旋律によって呼び起こされていきます。そこに自分の何かが共鳴して、今もプレーし続けているのでしょう。

 そう言えば、その力はノスタルジアという言葉が指し示す存在ではないでしょうか?日本語では懐古と訳されることが多いですが、単純に「あの頃は良かった」と懐かしむだけのものではなく、たとえ将来に見通しが立たなくても、それでも死ぬには勿体ないと自身の足を動かす力を与えてくれる、世界の美しさや人の心の素晴らしさを胸に刻み込んでくれた出来事の記憶、それをノスタルジアという言葉は導いてくれます。

 つまり「Ⅰ」はノスタルジアを奏でている、人が生きる理由を呼び起こすきっかけを与えてくれる、そんな楽曲だと思います。これを読んで下さっている方がいらっしゃいましたら、是非自分の大切な記憶と共にこの曲を聴いてみて下さい。プレーしてみて下さい。

 

 クライマックスは『phantasmagoria

 前回この楽曲に触れた時に長々と補足を入れてしまいましたが。

 はい。「Ⅰ」に並ぶお気に入りがこの「phantasmagoria」です。アーティスト名が非表示なだけに、暗闇そのものが優しく語りかけてくるように感じられるのが理由です。そして猫はその暗闇の中で本来求めていたものを見出だしました。ノスタルジアのストーリーは少女との再会をもって幕を閉じますが、それは暗闇で出会いの記憶を見出だした時点で既に確定されています。なので、個人的にはクライマックスは再会を果たした瞬間ではなく、この記憶を見出だした瞬間だと思っています。どんなに手を尽くしても決して他の誰にも打ち消すことなどできない、ノスタルジアにはそんな力強さがあることも感じさせてくれます。

 

 『Noah's song』は誰のもの?

 扉が関わらない章の楽曲は少女が創ったものとは別のBGMとしての扱いになるかと思いますが、「Noah's song」だけは例外だと思います。ノアが主役の楽曲なので。

 ならばノアが創り出したのかと言えば、ノアはあくまで旋律を操る者ですので、やはりこれも少女が創ったと見た方が良いでしょう。

 まだ猫と出会う前、共に語り合っていた相棒に少女が捧げた歌。それが「Noah's song」。だとすると、ノアと命名したのは少女になるのでしょうか。

 そしてノアが好んでこれを歌っていたのは、見放されたと思っていた時期に唯一自分を肯定する存在だったからでしょう。

 何だか想像が想像を呼ぶ内容なのと、本編紹介中にこの話をするとネタバレもネタバレになるので、こちらのおまけに回りました。

 

 

 おまけの方も以上となります。

 改めまして、本当にありがとうございました。