『ノスタルジア』の落書き帳

音楽ゲーム『ノスタルジア』に関して考えていることを、ちまちま書いていきます。一応Twitterもあります→@crt14display

『ノスタルジアOp.2』のストーリー考察記録

※この記事は音楽ゲームノスタルジアOp.2」のストーリー内容に関して、個人的な考察を記録する内容となっております。攻略情報や今後の更新予定などにつきましては、情報サイト「Bemani wiki 2nd」の閲覧をお勧めいたします。また、収録楽曲などの詳細情報が記載されている「ノスしるべ」もお勧めのサイトです。私も非常にお世話になっております。

※ストーリーの完結に伴い、全体的な考察を新しく作成いたしました。「『ノスタルジアOp.2』のストーリー考察記録・再」の1/2および2/2となっております。よろしければそちらをご覧いただければ幸いです。

 

 

 

 ※以下に記載しているのは、「これが正解だ」と主張するものではなく「この線ならある程度以上筋が通る」という観測に基づくものです。恐縮ですがご留意願います。

※また、2019年8月25日現在公開されているストーリーを全て進行させた状態での考察となっており、ネタバレ全開な内容になっております。現在進行中の方はご注意ください。

※ストーリーの更なる進行により、これ以降の記事に書かれている解釈とのズレが散見される恐れがあります。その場合、後の解釈の方に上書きされるものとご理解くだされば幸いです。

 

 

 

 

 

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 さて先日、初代&forteのストーリー考察を書き始める中で「Op.2のストーリーも一つの大詰めを迎えようとしている」と言っておりましたが、実際に最重要とも言える内容が公開されました。これで稼働から約1年かけて展開されてきたストーリーに一通りの考察ができるようになってのではないかと思われますので、試みてみましょう。

  

プロローグ

 今作を始めて最初に見る場面。ピアノだけが置いてある色褪せた小さな島で、佇む猫がおもむろにピアノの鍵盤を押します。ドの鍵盤を押していますが、おそらくは始まりを象徴する音ということなのでしょう(鳴っている音もドだとは思いますが)。

 するとピアノから星のような光が飛び出し、旋律を流しながら輝きますが、旋律は何かの一部のようで、その全容は分かりません。今となっては、冒頭で途切れている所にもやっぱり意味があったんだな…と感じますが、これについては後で分かります。

 さて、輝きが終わると、どこからか列車がやってきます。汽車のようです。車掌らしき黒猫が鳴らすベルに呼ばれるように、猫は乗り込みます。

 …この車掌もまた、何者なんでしょうかね。シルエットがぼんやりしているので、猫と言うより猫に扮した別の誰かなのでしょうか。いずれにせよ、猫(ややこしいな…)はこの列車に乗って、様々な旅を繰り広げていくことになります。

 これ以降、旅先の島を選び、楽曲を演奏しながら先へと進んでいく流れになります。今作では4つの旅のルートがあり、それぞれにメインとなる登場キャラクターがいますが、共通しているのは「記憶へ導かれる旅」でしょう。不確かな目覚めに始まり、楽しくも覚えのある場所を訪れ、やがて真実と遭遇する、そのような流れになっているかと思われます。

 既にそれぞれが真実に遭遇していますので、その上で各ルートが持っていた意味合いを探ってみたいと思います。

 

少年について

  大きなマントを羽織って旅を続けていた少年(「雨の街」解禁のお知らせで「彼」と言及されたため)が最終的に「雨の街」で呼び起こされた記憶は、病に臥せっている母のために花をプレゼントしよう、と双子の(とりあえずそう見えるので仮に双子としています)少女に手を引かれて、雨の降りしきる中にも関わらず花を摘みに行きます。無事入手できたものの雨は嵐となり、帰り道の橋を急いで渡ろうとしたものの途中で崩壊…という内容でした。

 見通しの無い暗闇の中、あの旋律が響き渡ります。

 さて、ぼんやりと列車に乗っている少年はその記憶が失われているようです。この事故と旅の間に何があったのかは描かれておらず、推測するしかありませんが、こちらは最後の方で触れたいと思います。

 何と言ってもキーポイントとなるのは「小さな家」でしょう。次に触れる少女のルートでも登場しますが、その佇まいは大きく異なっており、解禁曲「残日の聲」の画像では全体的に色あせており家は古びて木も枯れています。これはおそらく、到着時点では少年の記憶がまだ不確かな状態を表しているのではないでしょうか。そして、家の中で写真を拾い、そこに双子の少女の姿が映っているのを見付けますが、この時点ではピンと来ていない様子です。しかし、これは紛れもなく「残日の聲(こえ)」であり、色褪せて崩れ去った記憶の中にも呼び掛けるものがある、ということを示しているのでしょう。

(なお、写真を見て倒れるシーンについては、先にムービーに到達した方が倒れるようですので、ここでは写真を見ることができた場合を基準に考察しています)

 これが引き金となり、真実への導きのように雨が降り始め、「雨の街」へと入っていくことになる…という流れだと考えられます。この街は「はじまりの街」と同じ姿をしているようなのですが、何故街の姿をしているのか、何故同じ所に戻ってきているのかが分かりません。最初は少年たちの住まいがあったのかと思ったのですが、「小さな家」で写真がたくさん見つかっている以上、彼らの生まれ育ちはその家なのでしょう。

 他の2つ、「旅立ちの海」と「砂の国」については、実際に行ったことがあるのではなく、おそらくは母から読み聞かされたお話の中でも気に入っていたもの、ではないでしょうか。一般論ではありますが、海底や砂漠の果てといった未知の場所は少年心がくすぐられるものなのでしょう。少年も一人の男の子として、いつまでも心に残っていたのだと思われます。

 

少女について

 少年の「雨の街」で蘇った記憶ととりあえずの想像により、彼女は少年の双子という線で進めたいと思います。少女もまた嵐の中で渡っていた橋が崩れる事件に遭遇していますが、旅を通して事件については一切触れられていません。少年とはまた違った旅の内容になっています。

 少女の場合、最後に訪れる「真夜中の湖畔」を除いては、どこも美しく豊かで優しい場所となっています。間の2つ「風の丘」と「水晶の谷」は母から聞いたお話の中で少女が気に入ったものと見て良いでしょう。

(ちなみに「水晶の谷」の解禁曲「little runaway」の歌詞には「囁く黒猫に誘われて、ミルクの光を追い掛けて」という箇所があり、今作のための書下ろし感が半端なくて大好きです)

 さて、こちらの「小さな家」から触れてみましょう。少年の時とは違い、全体的にカラフルで木も力強く枝葉を抱えてそびえ立ち、家の様子もしっかりとしています。一方で解禁曲「ivy of rutiles」の曲調は、きらびやかながら違和感を駆り立てるもの。コメントでは「その輝きは遠い夢の記憶」とあり、曲名の意味は「ルチルの蔦」。ルチルとは光の屈折率の高い鉱石らしく、それを基に考えると、おそらくこの家の姿は真実を強固に歪めたものとして存在しているのでしょう。更に補強するように、旅の記録ではシャッターが新たに切られていきます。映されているのはおそらく、幸せだった頃の日々。しかしやはり仮初めだからか、少女が拾うとあっさりと風に飛ばされてしまいます。

 近づくことすら無意識に拒絶する記憶がある。つまり嵐の日の出来事をきっかけとしたトラウマもしくは自責の念を、どうやら少女は抱えているようです。

  そして、少女は「真夜中の湖畔」へと列車で運ばれていました。湖畔では空に月が2つ浮いているのですが、ロード画面の2つの球形図面と関係があるのでしょうか。

 解禁曲「Dust In The World」のコメントでは「(中略)過去と未来の全てを覆い隠す」とあります。過去を受け入れられない、しかし行く宛てもない、そんな少女の心境を表しているかのようです。そんな中、色彩強く舞い踊る蝶たちは、やがて母の愛の表れとして少女を癒します。ムービーでは一瞬だけですが、ベッドで一人泣きじゃくる少女と、その頭を優しく撫でる母の手が現れます。おそらく嵐の事故には遭ったものの少女だけは偶然か難を逃れたのでしょう。しかし大切な家族を自分の浅慮で荒れ狂う川に落としてしまったのです。平気でいられるわけがありません。そして母に慰められても自責の念は無くならずに今に至る…という流れだと思われます。

 そうして目覚めた「目覚めの森」は、少女が真実から逃げられる理想の夢の世界として存在していたのでしょう。

  果たして彼女は、今度こそ真実を己の事実として受け止められたのでしょうか。

 ここで画面は暗転し、あの旋律が響き渡ります。

 

ロボットについて

 今作は少年と少女の物語かと思っていたら急に脈絡なく出てきたので、ちゃぶ台返しを喰らった気分でした。しかも少年少女に一切絡まないという。

 それはともかく、島3つという短いストーリーではありますが、このロボット(以下ロボ)の経緯はしっかりとまとめられております。「忘れられた廃棄場」「おもちゃの王国」「眠らない工場」とあり、何なら無限ループができるぐらいです。

 「眠らない工場」で造られ、かつてはある人物と一緒に遊んでいたロボですが、新たなおもちゃが登場するとあっさりと廃棄場に捨てられてしまう。しかし再び目覚めるも記憶が無いらしく彷徨っていた所を猫に遭遇。(おそらく演奏によって)目覚めた別のロボから道を示され、旅立つこととなります。

 次に辿り着いた「おもちゃの王国」については、解禁曲「枕元で聞いた不思議な国のお話」のコメントに「おもちゃと魔法の王国」とあります。捨てられる前の楽しかった日々を、ロボの視点で再現したものだったのでしょうか。判断材料としては、同曲のイラストやムービー内で描かれたティーカップが「眠らない工場」のムービーでの回想シーンに登場する場面があります。

 しかし、記憶を追うということは、真実にも辿り着くということ。「眠らない工場」は「おもちゃの王国」がひどく寂れたような姿をしているのですが、じつは王国は始めから寂れていて、ロボは自らにフィルターを掛けていたのでしょうか。王国の奥、製造ラインに入った途端にレトロゲームよろしくドット化している所からも、そんな気がします。ムービーの中でロボが後ろからビームで撃ち抜かれていますが、これは自分がやってきたように他のロボに撃たれたということでしょうか。いずれにせよ、ここで自分が名も無く他と同じように生産された存在であり、相棒を得るも捨てられてしまったことを知らされます。

 見ている側も色々身につまされる思いをしながら、闇の中であの旋律が響き渡ります。

 

ペリカンについて

  これまた急にスケールの大きな物語が始まります(と言っても島は3つですが)。太古の記憶が眠っているかのような「化石の砦」で、猫が小さな卵と出会います。なんと猫は卵を暖め始め、なんとペリカンの雛(以下、彼)が生まれます。健気に猫の後をついてくる姿が、カワイイ!…やがて猫を乗せて飛べるぐらいにまで成長し、次なる場所「雲のエアポート」へと飛び立ちます。自力でそこまで飛んでいけたのは、太古の記憶の力でしょうか。

 雲を超え、虹を超えて辿り着いた島には、一本の若木。しかし、彼はそこに自分に似た者の面影を見ます。これは「化石の砦」の解禁曲「追憶のアラウカリア」のコメントなのですが「生命の継承者たちは置き去りにされた古えの記憶と呼応する」とあります。おそらくこの記憶が共鳴したのでしょう。かつてそこにいた先祖が土に還り、今はひとつの木となって生きている、その姿に寄り添う彼は何を思うのでしょうか。

 やがて彼の旅は「試練の活火山」にて終わりを迎えます。立っているだけで地熱でやられそうな島に彼が何故訪れたのか、描写はありませんがこれも太古からの記憶が織りなす宿命や覚悟のようなものでしょうか。羽を焦がせて力尽きた所に、追い打ちのように火の鳥が現れます。しかし彼は親であり友である猫を守るべく、最後の力を振り絞って突撃。相打ちとなり、火の鳥共々燃え尽きたのでした。

 悲しみと敬意を抱く中、画面は暗転し、あの旋律が響き渡ります。

 

楽譜の欠片

 さて、それぞれの島を最後まで進めると「楽譜の欠片」を取得できます。更に、ルートそのものを最後まで進めると、鍵となる音を得ることができます。この音が「楽譜の欠片」の集大成なのか、もっと別の用途があるのかは現時点では分からないでしょう。旅の結果得られるということは、記憶の真実へ辿り着く以外の目的がある事になります。

 計4つの音がどうなるのかというと、次に触れる「最果ての研究所」に集まります。

 

最果ての研究所

 マップ上では非常に抽象的に描かれていて何者か判別できないのですが、入ってみるとちゃんとした建物のようです。

 部屋の中には、カプセルに収められたあらゆる島の模型(?)が置かれており、少年、少女、ロボ、ペリカンの収められたものもあります。解禁曲の名前は「viator in vitro」。意味は「試験管の中の旅人」だそうです。コメントは「すべての旅人たちの 記憶はここに集う」。どうやら4つの旅は、この研究所に収められた記憶を辿っていたと言えそうです。

 もう一つ注目すべきは、演奏時以外の画面を取り囲む電球やメーターなどの装置が、同じようにこの部屋の中にもあることです。ということは、この研究所はストーリー内の一つの島にとどまらず、私たちが実際に触れている「ノスタルジアOp.2」そのものである、ということも指し示しているのだと思われます。

 研究所に入ると最初に、それぞれのキャラクター収められたカプセルから計4つの光が現れて廊下の奥へと向かい、猫を導きます。やがて一枚の扉に辿り着き、開くためのヒントを与えてくれます。ここまでしてくれると言う事は、彼らは余程切実に、扉の開いてその向こうと繋がりたいようです。

  扉を開くと、何もない空間に下り階段が。

 その先には、誰もいない小さな島。ピアノが一台、ぽつんと佇んでいました。

 

はじまりの場所

 一台のピアノに辿り着いた描写が、旅の記録ノートの中で特別に用いられています。今後のことは分かりませんが、猫の旅はここで一つの終点を迎えたと言って良いでしょう。

 4つの光に支えられて猫が辿り着いたピアノは、まさしくプロローグで出会ったピアノ。しかし、長い旅を経た今だからこそでしょうか、このピアノが何なのかが分かっているかのように回想が始まります。

 順を辿ると、以下のようになります。

1.列車が行き交う駅の中に一台のピアノが置かれていた

2.駅を利用した登場キャラクターたちが、それぞれピアノに触れていた

3.唯一、猫だけはずっとピアノの傍らに居続けた

 猫は親らしき猫と一緒に過ごしていたのですが、怪我でもしたのか弱ってしまい力尽きます。やがて猫自身も力尽きる時、光り輝く星のようなものが猫から飛び立ち、「はじまりの場所」のピアノに宿りました。今作のストーリーはここから始まるわけです。

 ちなみに、今作では「初回プレーでリサイタルが選択できない」ようになっています。プレイヤーの足並みを揃えさせる狙いもあったのでしょうけれど、「はじまりの場所」がこうして別途用意されていたことを考えると、最初にここでリサイタルができると色々ややこしくなるからだったんでしょうね。

 さて。今まで各ルートの終わりに流れていたあの短い旋律は、ここで解禁される楽曲「minne」の冒頭部分でした。更に言えば、各キャラクターが最終的に持っていた一音は、その冒頭の更に一部分でした。つまり、かつて通り過ぎた駅で聞いた旋律は、この「minne」だったということですね。

 楽曲コメントは「記憶の片隅で眠っていた いつか聴いた旋律」。それは猫も含めた各キャラクターに当てはまる言葉でしょう。

 そこで、改めてそれぞれの最後の場面を振り返ってみましょう。

1.嵐によって橋から落とされた少年

2.少年が事故に遭った原因が自分であると認識した少女

3.捨てられてその機能を失ったロボット

4.火の鳥と戦い、相討ちとなったペリカン

5.駅のピアノの傍らで弱り、力尽きた猫。

多少の補完が必要ですが、一つの共通点が見えてこないでしょうか。

 それは「死」です。ストーリーの最初にこの旋律を鳴らした猫もまた、かつて力尽きた存在でした。2だけが難しい所ですが、「小さな家」が全力で真実から逃げていた点と「真夜中の湖畔」が過去と未来を覆い隠す場所であることを考えると、少女は結局自責の念に耐え切れず、後に自死を選んだのではないかと推測できます。もしかすると母も病死していたのかも知れません。

 実際に迎えてみるまで死に瀕した心がどう動くかなど分かりはしませんが、死に際して(もしくは死を経て)、何も見えなくなり、誰の声も聞こえなくなったとき、彼らはあの駅で聞いた、優しさに満ちた旋律を頼ろうとしたのでしょう。しかしそれはとうの昔に記憶から抜け落ちており、自分の力だけでは全てを思い出せないのでした。

 やがて記憶は「最果ての研究所」に集まり(集められ?)、ピアノの傍らで全てを聴き続けていた猫だけは「はじまりの場所」のピアノから自由に再出発し、皆の中心として夢に似た世界の旅という形で追求を続け、それぞれが持っていた旋律の欠片が一つに統合され、ついに「はじまりの場所」にて旋律の全てがよみがえったのです。

 そしてそれを聴いた彼らは、猫はどうなっていくのか。

 それはまだ、語られていません。ストーリーの続きとして語られるかも知れませんし、別の形かも知れませんし、私たちの想像に委ねられるかも知れません。

 

 

 以下は、ストーリーの道筋に関係なく、気になった所を考察しております。

 

島選択画面の変化について

 「最果ての研究所」を最後まで歩ききって以降は、島選択画面の背景が暗く変色します。全ての旅が完遂されたことが引き金になっていることを考えると、この世界そのものが役割を終えようとしていることを表しているのでしょうか。

 

全体マップ(story)の配置

 島選択画面の左下には全体マップがあります。storyとeventに分かれていますが、最初は1段だったものが2段になり、今は3段です。

 ストーリーに区切りを見た今、この全体マップ(story側)にある島の配置を眺めてみると、あるものの形に見えてこないでしょうか。私には2つあります。

 ひとつは、フラスコ。もうひとつは、墓です。前者は「最果ての研究所」に集められた記憶が適切に吸い上げられ、「はじまりの場所」に全ての旋律が注がれるという構造。後者は「最果ての研究所」という碑に刻まれた「はじまりの場所」の旋律の下に眠る記憶たち。そんなイメージを持っています。

 

旋律を最初に奏でたのは誰か?

 駅に置かれたピアノで奏でられた「minne」に相当する旋律を皆が求めていたとすると、それを最初に奏でたのは誰だったのでしょうか。全くの部外者だったり実は自動演奏でしたとか、そんな可能性も十分にあるのでしょうが、駅での回想で双子のために母がピアノを弾いているのと、少年の回想シーンで母が出てきた時にこの旋律が流れていた所から、最初に奏でたのはこの母である、という可能性も投稿時点では捨てきれない推測です。

 

アーティスト名の非表示について

 解禁曲「viator in vitro」と「minne」にはアーティスト名が表示されていません。前作でも「phantasmagoria」と「Vide Nostalgia」が同様でした。同じように推測するのであれば、「〇〇をテーマにした発表会」的な視線を避けるためではないかと思われます。「viator in vitro」は研究所のテーマというよりは「ノスタルジアOp.2」そのものが歌っているような迫力を出すため、また「minne」は一見猫のための楽曲に見えそうですがそれを求める全ての者ための楽曲でしょうから、聴く人に広大なメッセージを訴えかけるための手法として、アーティスト名を出さないというのは実際に味わってみて実に有効なのだと思います。一言で言えばリアリティ。

 

ピアノの立場

 猫が最初にピアノを鳴らすと、列車がやって来ました。この列車はピアノが置かれていた駅で往来していたものと同じようです。この列車が主な移動手段(移動について何も描かれていない島もあります)だったため、ピアノもまた記憶の旅に貢献していた、ということになりそうです。

 ひょっとして、「最果ての研究所」を越えた導き手だったのでしょうか?皆の心に救いを届けるために猫を遣わした…そんな線もありそうです。

 

前作との方向性の比較

 面白さということではなく、ストーリーの方向性についての違いを考えてみました。音を奏でることで記憶が呼び起こされるという点では一致していますが、前作の方はまさにそれで、旋律たちを追い掛けることによって、一番大切な記憶へ辿り着くという流れがあり、その記憶をめぐるドタバタが描かれました。

 一方今作は、逆と言える方向性も持っているかと思います。様々な楽曲を奏でることによって真実たる記憶へ近づいていくのですが、その一方で記憶を集めることで一つの旋律を繋ぎ合わせようともしています。

 しかし辿り着くのは同じ「どんな時にも心を生かし続けてくれる、己の奥底にある大切な記憶」です。ノスタルジアとは本来、そのような意味合いで用いられるものなのでしょう。

 

 

 考察については以上となります。長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。