『ノスタルジア』の落書き帳

音楽ゲーム『ノスタルジア』に関して考えていることを、ちまちま書いていきます。一応Twitterもあります→@crt14display

『ノスタルジアOp.2』のストーリー考察記録・再2/2

※この記事は音楽ゲームノスタルジアOp.2」のストーリー内容に関して、個人的な考察を記録する内容となっております。攻略情報や今後の更新予定などにつきましては、「Bemani wiki 2nd」、詳細な曲紹介を含んだ情報なら「ノスしるべ」の閲覧をお勧めいたします。私も非常にお世話になっております。

 ※ストーリーを完結させた状態での考察となっております。つまりネタバレ全開となりますので、現在進行中の方はご注意ください。更にこちらは「『ノスタルジアOp.2』のストーリー考察記録・再1/2」からの続きとなっております。ご覧の際はご留意ください。

※解釈については「これが正解だ」と主張するものではなく「この線ならある程度以上筋が通る」という観測に基づくものです。恐縮ですがご留意願います。また、以前の記事の内容に対して矛盾や大きな変化が見受けられるかと思われますが、こちらが最新版ということで改めてお読み下されば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 「最果ての研究所」の目的は果たされました。ニコは愛の在りかを確信を持って知り、「はじまりの場所」に戻って来れました。(この時点ですでに、島選択画面の背景が色彩を失っています。おそらく研究所がその役目を終えたことを強調しているのでしょう)

 ここから場面が一気に転換します。

 完成を示すように和音の加わった「minne」の旋律の後、一面に広がる青空と花畑。

 そこには、大きな遠回りをすることになったものの、求めていた愛が満ちているのでしょう。画面の向こうから感じることはできませんが、とても暖かいと思われます。

 きっと、ここが終点。これ以上何かを求めてさ迷う必要のない、「記憶の終着駅」に相応しい最後の場所。

 そこに、共に旅をした仲間たちも降り立ちます。ここはどこだ、と言うように戸惑っている様子から、彼らも不意に送られてきたようです。ニコの目的からすると既にその役目を終えているので再び眠りについてもおかしくはないのですが、旅を通して育まれていた友情に「最果ての研究室」つまりピアノと母が最後に応えてくれたのでしょうか。

 再会を喜ぶ一同ですが、間もなく花畑は枯れ果て、色彩は失われ、それどころか空も割れ砕け、暗闇に取り残されてしまいます。

 そして、目の前に現れる光。エルとアルの母、先輩ロボ、まだ見ぬ親鳥の影を映し出し、導くように遠ざかっていくのでした。

 

 あまりに唐突で考察の難しい展開ですが、まずは光の形から、これはやはりニコの願望だと見て良いかと思います。自分の探し物のために付き合ってくれた故の深い感謝からか、彼らが心から求めているものへ連れて行ってあげたいという新しい願望が膨らんでいたのでしょう。花畑に彼らが現れた瞬間、ニコが彼らをただ見つめている空白の時間が設けられていましたが、嬉しいけれど何故こっちへ現れたのかと戸惑っていたのかも知れません。

 しかし、この場は一つの完成を見ています。「最果ての研究所」も役目を終えました。郷夢の世界において、これ以上できることはありません。ここから更に事を動かすのであれば、まして新しい未来…つまり郷夢の外へ進もうとするのならば、確かにこの場を捨て去らなければならないのでしょう。しかも一切の繋がりを断つ形で。この崩壊は、つまりニコ自身の心が引き起こした、覚悟の結果だと言えそうです。戸惑う旅人たちに対して、ニコは大きな動きを見せていないようにも見えます。

 ちなみに、崩壊にあたってストーリー曲全てが課題曲として設定されていましたが、郷夢の世界に別れを告げる意味合いがあったのでしょうか。

 

 光に示された、愛する者たちの姿に導かれて、それぞれの闇路の旅が始まりました。これに関する各キャラクターの展開と考察については、記事「闇路の旅①~④」に記しております。

 この旅路の流れは共通のもので、まず、果てまで歩き着いた所で、扉を開く選択と課題曲の演奏が求められます。「覚悟のある者は扉を開けよ」と言われますが、この向こうは「新しい未来」という現実。郷夢の世界、そして仲間たちとの別れを予告しているのでしょう。

 これに対し、課題曲はどれも決意に満ちた力強さに満ち溢れています。ニコに愛について学ばせたそれぞれの力が、死を越えて「新しい未来」へと自身を推し進めているかのようです。

 演奏後、上空にそれぞれが本当に求めていた未来への願望の姿である「新しい未来」が現れます。あまりに遠くて届きそうにないのですが、そこに彼らの旅を支えた列車がやってきます。

 それぞれの、愛する者を乗せて。ムービーの展開を順に追うと、「新しい未来」に列車が接近して、客席のアップに切り替わり既に乗っている…という風になっているので、わざわざ愛する者が迎えに来るように列車の派遣元であるピアノが取り計らってくれたということになります。せっかく苦労してお膳立てした旅の舞台や花畑を壊されて不機嫌の一つでも抱えてるんじゃないかとも思いますが、そこは大切なニコの信じる道を全力でサポートしようという親心なのでしょうか。

 一緒に列車に乗ろうと仲間たちは猫に呼び掛けますが、猫は一貫して首を横に振ります。何故ならニコ自身は既に求めていた所へ辿り着いているからです。たとえ今後暗闇が続くのだとしても、そこには間違いなく母の愛が在り続けているのです。仲間たちの「新しい未来」への歩みは、彼らの友情に対するニコからの返礼なのでしょう。たとえいつか忘れられてしまったとしても。

 

 やがて全ての仲間を見送り、ニコは最後の歩みを始めます。今は崩壊してしまった旅路の思い出を振り返っているのは、それでも名残惜しさを感じているからでしょうか。そうだとしてもそれが自然なことだと思います。

 最終的にニコはピアノへと辿り着きます。その身を横たえ……やがて動かなくなりました。

 求めていた愛がここにある。仲間たちの悲願も叶えられた。

 もはや満願成就、求めるものなど何もない。歩みきった時の「光が呼んでいる」という演出からもこの想いが感じ取れます。

 外から見ると至って寂しげな暗闇の中の孤独ですが、ニコにとっては安堵に満たされていた事でしょう。

 

 そんなニコを包み込むように現れる、母の姿。うっすらとしているのは死者であるが故でしょうか。愛おしそうに息子に寄り添います。何かを語りかけているようにも見えます。

 やがて母は姿を消し、代わりにより強い光がニコを包むのでした。

 視界を眩しさで埋め尽くし、それでもなお存在を主張し続ける光。これに触れた時、最後のストーリー楽曲が始まります。

 

 「voca Nostalgia」。

 イラストはゲーム終了時に出てくる、草原の中に佇むピアノの場面に似ています。

 コメントは「物語は続いていく 郷夢の世界で そして此の世界で」。

 前作のエンディング曲「vide Nostalgia」を思い起こさせる曲名ですが、あちらがエンドロール的なタイミングだったのに対し、こちらはその一歩手前、旅全体を通してのゴールを感じさせるタイミングでの解禁です。「Dream of you」に近いでしょうか。「minne」と「viator in vitro」を組み合わせ、より壮大に、包み込むように編曲された楽曲です。旅の始まり、その歩み、そして結末へとストーリー全体を奏でているように思います。

 ちなみに曲名のvocaをひとまず翻訳にかけてみると、ボスニア語で「果実」と出ました。ボスニア語に脈絡が無さ過ぎる感じなので難ですが、完成を歌う曲であるならば合っていると言えなくもないでしょうか。また、英語的に捉えればvocalやvoiceに近く、「minne」についてwac氏がツイッターで言及した音楽と記憶との切り離せない繋がりを想起させる言葉でもあります。

 コメントが表す、これで終わりではないというメッセージは、こうした物語は一匹の猫に留まるものではないと私たちに伝えているのでしょうか。

 

 演奏を終えて、万感に満たされた中、エピローグが始まります。

 誰もいない駅。孤独なピアノ。

 おそらく偶然、同じ時に集う人々。エルとアルと母親、マナコと主人と先輩、パタと親鳥。双子については合流した描写が一切無かったので心配していましたが、無事に3人揃えたようで良かったです。

 さて、一同は、会ったことがあるようなないような、少し戸惑っている風に感じられます。

 それでも、皆の視線はすぐにピアノへ。それぞれが「新しい未来」へ辿り着いたものの、やはりもう一度あの旅を共にしたニコに会いたいと願ったのだと、お互いに気付いたのでしょう。

 そして、一人ずつ、一つずつ、思いを込めるように鍵盤を押していきます(パタは嘴で押しているのでしょうか…)。必要なことは、もう既に理解しているかのように。

 現れた4つの音は、ニコの愛への扉を開いた、あの「minne」の旋律。今度は外から開いたかのようです。

 たっぷりと駅に響き渡った、その後。

 

 ピアノの下からひょっこりと、ニコ。

 

 その後の喜びの様子は、あえて書くまでもないでしょう。ただ、そんな彼らの後ろで微笑む家族たちの様子から、旅の話は家族の間で共有されていたのだろうと推測できます。

 最後に、ピアノの上にニコの母がうっすらと現れ、全てを見守っている様子が描かれて終わります。

 ニコは最終的に暗闇の世界で、ピアノの下、母と共に在る事を選びましたが、母としてはそれが嬉しかった一方で、我が子の微かな心残りも察していたのでしょう。

 親の願いはいつも、我が子の幸せ。すれ違うことも少なくないですが、ここでそんな野暮な話は無しです。

 きっと、眠りについたニコに現れた時、「どうか自由に、あなたの新しい願いに向けて進みなさい」と、「わたしはいつも一緒にいますよ」と語りかけていたのではないでしょうか。あの最後の強い強い光は、母との再会の安らぎであると同時に、ニコの「新しい未来」への扉だったのだと思います。ニコにとっては予想だにしなかった展開となったことでしょう。

 

 そして、白くフェードアウトした画面に、「Fin.」の文字と、割れたガラスの籠、そこに留まる蝶。蝶は古来から死と結び付けられることが多いようで、死を越えた向こう側というストーリーのゴールそのものを表現しているように思えます。

 

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 随分と長くなってしまいましたが、ストーリー全体を見渡しつつの考察は以上となります。

 Op.2が稼働してからしばらくは、記憶を取り戻す旅をしているのかと思っていましたし、当初の考察でもそのような書き方をしていたと思いますが、「生前の記憶の力で死を越えていく」というのがストーリーのテーマだったのだと自分の中で変遷していく様子は、我ながら面白いものでした。

 しかし、ニコの望みとそのために奔走したピアノや母の位置付けについては「はじまりの場所」の解禁時点で思い付いても良かったんじゃないかと思うのですが、結果論というやつでしょうか。とにかく「最果ての研究所」が何の考察も浮かばなくて凄く悩みました。ニコがでっち上げたにしてはその様子が客観的に過ぎるし、一体何なんだろうかと。

 それにしても、このような心温まると同時に生きる励みになる物語をよく思いつくものです。時間をかけて、アイデアを寄せ合って、じっくりと作り上げたのでしょうか。いずれにしても前作に引き続き「ノスタルジアとは何だろうか」を熟考に熟考を重ねた成果なのだろうと感じています。

 制作スタッフの皆様、本当にありがとうございました。

 

 と言っても、Op.2の更新自体はまだ続いていくみたいですね。主に前作ストーリー曲のReal譜面追加という形で。新しいイベントとか、ストーリーの番外編とか、思い浮かぶ楽しみだけならまだありますが、どのようになっていくのでしょうか。

 

 本記事は以上となります。

 長時間、お付き合い頂きありがとうございました。